ニューハーフ物語
私の初恋は、あっけなく、終わった。


純一郎が性同一性障害だなんて、15歳の乙女には、残酷過ぎる。

それからの5年間は、純一郎にとっても、私にとっても、正に、波乱万丈の年月だった。

純一郎は、私に、カミングアウトしたあと、すぐに、ご両親に話したのだ。

思ったとおり、父親は、その話しを聞くや否や、烈火のごとく怒って、何日も口をきいてくれなくなった。

母親は、毎日、純一郎の顔を見れば泣き崩れた。

中学校に進学したあたりから、純一郎の精神は、バランスを崩していったのだという。


小学校の頃も違和感がないわけではなかったが、自分の中で、それほど、はっきりした『性』があったわけではなかった。

中学校の頃も体の変化に伴って、しんどくなる時もあったが、男女共学で、男女間の仲も良かったので、精神的な気持ちを誤魔化すことができた。

しかし、男子校に進学してからの純一郎は、周囲は、もちろん、自分に対して、自分の感情を偽ることに、ある種の抵抗を感じるようになった。


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