君に逢えたら
どういう気持ちで私に話しかけたんだろう。
駅周辺を見渡してみる。
今日はどこからも歌声は聞こえなかった。
いないのかな。
ほっとしたような、残念なような。
ゆき自身にさえ自分の気持ちが分からなかった。
「誰か待ってんの?」
急に声をかけられたゆきは驚いて飛び上がった。
「はは。ごめん。びっくりした?」
「元崎…」
そこにいたのは元崎一弥だった。
「誰かと待ち合わせ?」
「え?ううん。バイトの帰りだよ。」
「そっか。キョロキョロしてたからさ。今日は一人なんだ?」
「う、うん。まあ…」
ずっと考えていた人物が目の前に現れて、ゆきは焦った。
心臓が尋常ではない速さで打っている。
「電車の時間大丈夫?」
「あ、うんまだ早いし。」
「じゃあさちょっと話さない?」
元崎は近くのベンチを指差し言った。