君に逢えたら
「邪魔して悪かったな」

「誰もそんなこと言ってないだろ。」

「顔が残念がってるぞ」

「誰がだよ!」

と言いながらも元崎の顔は少し赤くなっていた。

「今日、歌うの辞めた方がいいぞ。」

圭が言った。

「何で?」

「先生の見回りがあるってさ」

「げっ。まじで。
仕方ねぇ。
悪い、川島。そろそろ行くな。
付き合わせてごめんな」

もう行っちゃうのか。

もっと話したかったな…

「ううん。あの、久々に話せて、楽しかった。」

「そっか。俺も!」

また明日な、
と軽く手を挙げて元崎はベンチをたった。

小さくなっていく後ろ姿をゆきは見つめた。

元崎もゆきと話せて嬉しいと思ってくれたのだろうか。

『また明日』か。

明日も元崎に会える。

何だか胸がいっぱいだった。

まさか元崎と再び話せる日が来るなんて思ってもみなかった。

元崎が見えなくなった後もゆきはしばらく

ベンチから立つことができなかった。


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