君に逢えたら
「移動ですか?」

「そうなんだよ。店舗拡大で、新しく店ができるからさ、悪いんだけど川島さんそっちに行ってくんない?」

バイト先の店長から言われた言葉だった。

「えっでもそっちでもバイト雇えばいいんじゃ…」

「それがね、少しでも内容知ってる子がいいって向こうが言うんだよね。」

そんな。

店長から言われたことだ。ゆきに断る権利はない。

「分かりました。」

「そう?良かったよ。じゃあ明後日からよろしく」

「明後日!?そんな急にですか!?」

「うん。明日は引き継ぎね。じゃあ今日はもういいから。お疲れさん」

言いたいことを全て言った店長は仕事に戻った。

新しくできた店舗はゆきの家から近い所だった。

今よりも便利になる。

それを思って店長も声をかけてくれたのだろう。

でも…

そうすると、元崎がいる駅を使わなくなる。

わざわざそこに行くには少し面倒くさい距離である。

『お詫び』

という元崎の言葉を思い出す。

ライブを聞くだけで元崎の力になれるならいくらでも通う。

元崎に言ったら、きっとそこまでして来なくていいって言うだろうな。

どうしたもんかと思いながら、ゆきは帰途についた、

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