君に逢えたら
「おい!ばかかお前!」
急に叫んだ元崎に圭の方が焦った。
しかし、小春は特に驚いた風もなく元崎を見た。
「川島の友達だよね?一回ここで会ったけど、覚えてる?」
「はあ。どうも。」
小春は面倒くさそうに答えた。
「えーっと…一人?」
「…あぁ…ゆきですか?」
小春は少し考えてから言った。
「ゆきならもうここ通らないですよ。」
「え?何で?」
「バイト先変わったんですよ。だから、この駅使いませんよ。」
うそだろ。そんなの聞いてない。
「それっていつ…?」
「もう結構前。」
結構前?
おかしい。
ゆきは昨日も一昨日もここに来ていたのに。
「でもここには来たいって言ってたんで今日も来るかもしれませんね。」
「え、来たいって言ってたの?」
「はい。遠回りだけど、昔の罪滅ぼししたいって言ってましたよ。」
「罪滅ぼし…」
浮上した気分を一気に落とされた。
そんな元崎にお構いなく淡々と小春は続けた。
「あなたがどういうつもりでゆきに声をかけたのか知りませんけど、
これ以上昔のこと引っ張らなくてもいいんじゃないですか?」
それじゃ、と言いたいことを言った小春は軽く頭を下げて去っていった。