とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
店に着いて20分。まだサキのオンナが姿を現す気配は無い。
コジャレタ居酒屋とでも言うのだろうか。滅多に足を踏み入れることの無いような場所で、タバコを吹かすマキと一足先に盛り上がっていた時のコト。
「牧野様。お連れ様がいらっしゃいました」
「あ~、通してくださーい」
店員さんが襖の向こう側から声を掛け、数分遅れでその襖が開いた。
「すみません、遅くなって。送ってくれるはずの永久がなかなか起きなくて」
申し訳なさそうに頭を下げるその女に、ハッと息を呑んだ。
「何?リキ知ってんの?」
「イヤ…知ってるっつーか何っつーか」
Gパンにキャミソール、シャツを引っ掛けただけのその飾り気の無い格好は、あの頃と全然変わっていなくて。髪型や色は少し変わったものの、着けてる2連のクロスのネックも薬指のリングもあの頃のままだった。
「…力(ちから)?」
「おぅ」
「何で居んの?」
「俺、メンバーだし」
「…はぁ?」
「紹介…しなくてもいーみたい?」
襖を閉めて振り返った女は、髪を鬱陶しそうにかき上げながら「お邪魔します」と俺の前を陣取った。ノーメイクなのに、透き通るような肌の色。そのくせ唇なんかはやけにピンクで、ソコがまた色香が漂う。
「ねぇ、あんた大学生だったんじゃなかったっけ?」
「おぅ」
「だよね、うん」
時々メールして、時々電話越しに話すくらい。そんな女と会話が続くハズもなくて。結局マキに助け舟を出してもらい、何とか俺達は沈黙を逃れた。
「ユナちゃん、リキのコト知ってんの?」
「リキ?力のこと?あぁ、うん」
「何…?優奈のカレシってサキのコト?」
「うん。何で力が知ってんの?」
「イヤ、だから俺もメンバーだし」
コイツと芸能関係の話題で噛み合わないコトは、もう4年も前から知っている。
だから敢えて俺も芸能界にいるなんて話はしなかったし、コイツも興味が無いから訊かなかった。ただそれだけのコト。
コジャレタ居酒屋とでも言うのだろうか。滅多に足を踏み入れることの無いような場所で、タバコを吹かすマキと一足先に盛り上がっていた時のコト。
「牧野様。お連れ様がいらっしゃいました」
「あ~、通してくださーい」
店員さんが襖の向こう側から声を掛け、数分遅れでその襖が開いた。
「すみません、遅くなって。送ってくれるはずの永久がなかなか起きなくて」
申し訳なさそうに頭を下げるその女に、ハッと息を呑んだ。
「何?リキ知ってんの?」
「イヤ…知ってるっつーか何っつーか」
Gパンにキャミソール、シャツを引っ掛けただけのその飾り気の無い格好は、あの頃と全然変わっていなくて。髪型や色は少し変わったものの、着けてる2連のクロスのネックも薬指のリングもあの頃のままだった。
「…力(ちから)?」
「おぅ」
「何で居んの?」
「俺、メンバーだし」
「…はぁ?」
「紹介…しなくてもいーみたい?」
襖を閉めて振り返った女は、髪を鬱陶しそうにかき上げながら「お邪魔します」と俺の前を陣取った。ノーメイクなのに、透き通るような肌の色。そのくせ唇なんかはやけにピンクで、ソコがまた色香が漂う。
「ねぇ、あんた大学生だったんじゃなかったっけ?」
「おぅ」
「だよね、うん」
時々メールして、時々電話越しに話すくらい。そんな女と会話が続くハズもなくて。結局マキに助け舟を出してもらい、何とか俺達は沈黙を逃れた。
「ユナちゃん、リキのコト知ってんの?」
「リキ?力のこと?あぁ、うん」
「何…?優奈のカレシってサキのコト?」
「うん。何で力が知ってんの?」
「イヤ、だから俺もメンバーだし」
コイツと芸能関係の話題で噛み合わないコトは、もう4年も前から知っている。
だから敢えて俺も芸能界にいるなんて話はしなかったし、コイツも興味が無いから訊かなかった。ただそれだけのコト。