とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
「あーあ、サキが羨ましいなー」
「はぁ?急に何言ってんの」
「だって、優奈にこんなに愛されてんだもん。俺もちょっとでいいから愛されたーい」
「…あっ!スーパー寄って?」
「流したね、完全に」
「あんたにはユキがいるでしょ。ユキ今日遅番だから、夕飯の用意手伝ってから迎えに行ってきて」
「えー?俺が?」
「彼氏でしょ」
「そうだけど…」
優奈に少し気があって近付いて、それで俺のファンだっていう妹の優希を紹介されただなんて、絶対誰にも言えない裏事情。幸い俺の周りでそれを知ってる奴はマキくらいだから、それは安心だけど。
まぁ、今は俺も優希のことが大好きだし、それはそれでいいんだけどね。
「優奈、俺今日ハンバーグな気分」
「ハンバーグねぇ…」
スーパーに着いて「何にしようか…」なんて悩んでる優奈の後ろをカートを押して追いながら、ちょっとしたリクエスト。
サキがいる時はサキの意見最優先だから、今日くらいは俺のリクエストを聞いてくれてもいいんじゃない?って、じっと止まって優菜が振り返るのを待つ。
「ダメ?」
「だめじゃないけど、永久のは注文多いからなぁ…」
「ワガママ言わないから」
「和也は違うソースの方が好きなんだけどなぁ…」
ここん家の夕食のメニューがハンバーグの時は、俺とサキはいっつもケンカで。最初のうちはソースを作る前にジャンケンで決めてたけど、最近はそれを見かねた優奈がソースを2種類作ってくれている。
「んー。和也とケンカしない?」
「絶対しない!」
「じゃぁ、捏ねるの手伝ってくれるなら」
「オッケー!」
少し悩みながらも、それでも俺の意見を考慮してくれてる姿はさすがお姉サマ。キッチンに2人で立つ姿を想像して少し顔が緩んだことは、泣いちゃうから優希には秘密にしておこう。あっ、もちろん煩いからサキにもね。
そんな、とあるアイドルの彼女と俺の恋愛事情。