とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
「何ですかー?甘えんぼの真哉君」
影になって見えないけれど、今腕の中で俺を見上げる美佳はきっと物凄く優しい目をしている。顔のすぐ下で聞こえてくる声と、ゆっくりと俺の頭を撫でる優しい手がその証拠だ。
一生、死ぬまでこの腕の中に居れば良い。そうしてくれれば、俺は最高に幸せなのに。と、自分勝手な想いを心の中で自嘲して笑った。
「結城になんない?今持ってる奴らが卒業したらさ」
何度も事務所の人間に頭を下げ、この言葉を言うために公表までしてもらった。タブーを冒してまで手に入れたい。そう思ったのは美佳が初めてだ。
「母さんも早く嫁に来てほしいって。俺が心配なんだってさ」
「んー。嬉しいけど、今はまだ無理」
「頼りない?俺が」
「そうじゃないよ。そうじゃないんだけど…」
続く言葉はわかっている。俺もそこまでバカじゃないつもりだ。今は仕事が楽しい。両立出来るほど器用じゃない。そう言わせてしまう自分が何だかとても情けなくて。「ごめんね」と、そんな言葉が聞きたいわけではないのに。困らせることでしか想いを確認出来ない自分の方が、仕事と家庭を両立出来ないと言う美佳よりも不器用なのではないかと思う。
「困らせた?ごめん」
「困ってないよ。素直に嬉しい」
「じゃあ俺、待ってていい?美佳が「結城になりたい」って思うようになるまで」
「待てる?5年掛かるかも、10年掛かるかもしれないよ?」
「待ってる。待ってるからそれまで俺と一緒に居て」
「ありがと。シン…大好き」
降ってきた唇を受け止めながら、そのままベッドへと倒れ込んだ。たかが半年、されど半年。一目惚れだから。と、再び唇を重ねてつい昨日のことのように思えるあの日のことを思い出す。
影になって見えないけれど、今腕の中で俺を見上げる美佳はきっと物凄く優しい目をしている。顔のすぐ下で聞こえてくる声と、ゆっくりと俺の頭を撫でる優しい手がその証拠だ。
一生、死ぬまでこの腕の中に居れば良い。そうしてくれれば、俺は最高に幸せなのに。と、自分勝手な想いを心の中で自嘲して笑った。
「結城になんない?今持ってる奴らが卒業したらさ」
何度も事務所の人間に頭を下げ、この言葉を言うために公表までしてもらった。タブーを冒してまで手に入れたい。そう思ったのは美佳が初めてだ。
「母さんも早く嫁に来てほしいって。俺が心配なんだってさ」
「んー。嬉しいけど、今はまだ無理」
「頼りない?俺が」
「そうじゃないよ。そうじゃないんだけど…」
続く言葉はわかっている。俺もそこまでバカじゃないつもりだ。今は仕事が楽しい。両立出来るほど器用じゃない。そう言わせてしまう自分が何だかとても情けなくて。「ごめんね」と、そんな言葉が聞きたいわけではないのに。困らせることでしか想いを確認出来ない自分の方が、仕事と家庭を両立出来ないと言う美佳よりも不器用なのではないかと思う。
「困らせた?ごめん」
「困ってないよ。素直に嬉しい」
「じゃあ俺、待ってていい?美佳が「結城になりたい」って思うようになるまで」
「待てる?5年掛かるかも、10年掛かるかもしれないよ?」
「待ってる。待ってるからそれまで俺と一緒に居て」
「ありがと。シン…大好き」
降ってきた唇を受け止めながら、そのままベッドへと倒れ込んだ。たかが半年、されど半年。一目惚れだから。と、再び唇を重ねてつい昨日のことのように思えるあの日のことを思い出す。