とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
まだ俺が高校生だった時、その高校の卒業生だった美佳が教育実習に来た。それが俺達の出会い。

一目惚れなんてあり得ない。

と、意地を張って美佳に近付こうとしなかったことを、教育実習が終わってから後悔した。


再会したのが1年前、ちょうど体育祭の日。そんな日に限って家の鍵を忘れたバカな弟のお陰でその学校に勤める美佳と再会し、付き合いだすまでに然程時間は掛からなかった。

それからは正にトントン拍子。1人暮らしをしていた美佳の家に通うようになり半同棲、そして半年前に2人で新しくマンションを借りた。勿論、美佳の実家にも俺の実家にもお互い挨拶済み。

だから、これから先はゆっくりでも良いのではないかと思う。ずっとハイペースだと、きっと俺の方がもたなくなるから。

「明日、俺オフだから体育祭行く。2組の結城の兄貴だし、身内だから大丈夫っしょ?」
「まぁ、ちゃんと保護者席に座って大人しくしててくれるなら」
「はーい。美佳センセー」

片手を小さく挙げて約束し、そのまま抱き締めて瞼を閉じる。もうぬいぐるみなどとうに用無し。こうして眠りに就くまで抱き締めて、朝になれば美味しそうな朝ご飯の匂いがする。家を出るが出るまで美佳は忙しそうに動き回っているのだろうけれど、それをぼーっと眺めていることは少し大目に見てもらおうと思う。

オフなんだし、いいっしょ?


そんな、とあるアイドルである俺と先生の恋愛事情。
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