とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
「行くよ?」
「遠慮する」
「会って直接確かめれば良いじゃんか」
「遠慮するってばー!」
散々抵抗したけれど、やはり永久はいくら可愛い顔をしていても男で。強制的に引きずられて門の前に着くと、黒い車の運転席側の窓が下がった。
「お待たせ。なかなか強情な奴でさ。ゴメンね、わざわざ」
「いや、良いけど…誰よ、ソレ」
「ん?直ぐわかるって」
「はっ?」
幸い助手席側からあたしのは死角に入っていたらしく、永久が連れている女が誰なのか、あたしの彼氏「岬 和也」は気付いていないようだった。久々に機械越しではない声が、一気にあたしの涙腺を緩める。
こんなに泣く女だったか?あたし。
「あー、また泣いたよ。サキのこととなるとマジ弱いね、優奈の涙腺」
「…ウルサイ、バカとわ」
「はっ?優奈!?」
「そっ。ってか、時間無いしさっさと行くよ」
「何で居んだよ!」
「誰?ってか、何キレてんの、オマエ」
マキ君…だったか、運転席からあたしと和也の顔を交互に見ながら、ついでに永久の顔も不思議そうに見上げている。
キレてる理由がわからない。ってか、何であんたがキレてんのよ。と言いたいのは山々だけれど、出るのは涙だけだった。
「一緒に連れてくから、スタジオまで。ちゃんと仲直りしなよ?」
「はっ!?ヤダよ!」
「サキの意見は聞いてない」
ピシャリとそう言われ、和也の声は聞こえなくなった。相変わらずあたしは車に押し込まれても泣いているばかりで、運転席から投げかけられる質問にも満足に答えを返すことは出来なかった。
「アンタ誰?」
「…」
「サキの知り合い?」
「…」
「とわわとは知り合いなんだよな?連れてくっつぅくらいだから」
「…」
だんだんと声が苛立っていくのがわかる。けれど、あたしにはどうしようもなくて。ギュッと膝の上で手を握りながら、声を殺して泣くだけだった。
「あ~、あんま怒んないでやって。コイツ今、誰かさんのおかげで情緒不安定なの」
「イヤ、怒ってねぇケド。誰よ、その子。俺だけ蚊帳の外じゃん」
「サキ…言ってないの?」
「…あぁ?おぉ。うん」
確か、マキ君という人は名前をよく聞く人だ。和也と同じグループだか何だかで、何かにつけてつるんでいる。そんな人にまで隠すあたしの存在は、やはり和也にとったら迷惑なのだろうか。考えたくはなくとも、自然とそんな想いも込み上げて来る。
嫌なんだ、こんな想いが。
「遠慮する」
「会って直接確かめれば良いじゃんか」
「遠慮するってばー!」
散々抵抗したけれど、やはり永久はいくら可愛い顔をしていても男で。強制的に引きずられて門の前に着くと、黒い車の運転席側の窓が下がった。
「お待たせ。なかなか強情な奴でさ。ゴメンね、わざわざ」
「いや、良いけど…誰よ、ソレ」
「ん?直ぐわかるって」
「はっ?」
幸い助手席側からあたしのは死角に入っていたらしく、永久が連れている女が誰なのか、あたしの彼氏「岬 和也」は気付いていないようだった。久々に機械越しではない声が、一気にあたしの涙腺を緩める。
こんなに泣く女だったか?あたし。
「あー、また泣いたよ。サキのこととなるとマジ弱いね、優奈の涙腺」
「…ウルサイ、バカとわ」
「はっ?優奈!?」
「そっ。ってか、時間無いしさっさと行くよ」
「何で居んだよ!」
「誰?ってか、何キレてんの、オマエ」
マキ君…だったか、運転席からあたしと和也の顔を交互に見ながら、ついでに永久の顔も不思議そうに見上げている。
キレてる理由がわからない。ってか、何であんたがキレてんのよ。と言いたいのは山々だけれど、出るのは涙だけだった。
「一緒に連れてくから、スタジオまで。ちゃんと仲直りしなよ?」
「はっ!?ヤダよ!」
「サキの意見は聞いてない」
ピシャリとそう言われ、和也の声は聞こえなくなった。相変わらずあたしは車に押し込まれても泣いているばかりで、運転席から投げかけられる質問にも満足に答えを返すことは出来なかった。
「アンタ誰?」
「…」
「サキの知り合い?」
「…」
「とわわとは知り合いなんだよな?連れてくっつぅくらいだから」
「…」
だんだんと声が苛立っていくのがわかる。けれど、あたしにはどうしようもなくて。ギュッと膝の上で手を握りながら、声を殺して泣くだけだった。
「あ~、あんま怒んないでやって。コイツ今、誰かさんのおかげで情緒不安定なの」
「イヤ、怒ってねぇケド。誰よ、その子。俺だけ蚊帳の外じゃん」
「サキ…言ってないの?」
「…あぁ?おぉ。うん」
確か、マキ君という人は名前をよく聞く人だ。和也と同じグループだか何だかで、何かにつけてつるんでいる。そんな人にまで隠すあたしの存在は、やはり和也にとったら迷惑なのだろうか。考えたくはなくとも、自然とそんな想いも込み上げて来る。
嫌なんだ、こんな想いが。