とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
「俺の彼女のお姉サマ。双子だけどね」
「へぇ~。じゃぁ相当な美人さんだ。で、サキとはどんな関係?」
「…」
「さぁきぃ?」
「…何でもねぇよ」

その瞬間、あたしの中で何かが切れた。そりゃもう見事に。プチンで音が自分でも聞こえるくらいに。


ナンデモネェヨ


と言いましたね、あなた。7年も付き合ってる女に向かって何でも無い、と。告白してきたのも、迫ってきたのも、ついでに言うと「優奈としか結婚しねぇ」ってのたまったのも自分のくせに。

「サキ…それはちょっと…どうかと思うよ、俺」
「なっ…何なの…あんた。バカじゃない!?自分が何言ったかわかってんの!?バカよ!バカ和也!」
「イヤ、優奈落ち着いて」
「はぁっ!?バカはオメェだろうがっ!何とわわに「優奈」なんて呼ばせてんだよ!このバカ女!」
「サキも…落ち着こうよ、アンタタチ」


「「オメェは黙ってろ!」」


「…ハイ」

こうなったあたし達は、たとえ永久であろうがユキであろうが止められない。それは自分達でもわかっているつもりだ。ただ、この態度はいただけない。一体全体あたしが何をしたと言うのだろう、このバカ男は。

「つーか、何でとわわと一緒にいんだよ!」
「煩いなっ!大学一緒なんだから仕方ないでしょ!あんたこそ何であたしには掛けてこないくせにこんな変態には電話してくんのよ!バッカじゃないの!」
「変態って…」
「うっせぇな!俺にだって色々都合つぅもんがあんだよ!」
「メールくらいくれたって良いでしょ!心配してたんだから!何かあったんじゃ…ない…か…って」

1度緩んだ涙腺は、やはりそう簡単には戻らなくて。和也に会えて嬉しい。でも、「何でもねぇよ」って言われて腹が立った。でも…元気で良かった。

「何かって…何だよ」
「倒れたり…したんじゃない…か…って。忙しいって…寝る時間も無い…って…言ってた…から」
「他の女と一緒だとか…そうゆうのは思わねぇんだ」
「…あ?そうゆうことしてたの、あんた。良いご身分だよ、このバカ和也!」
「イヤ、そうじゃねぇけど」
「あたしがどれだけ心配したと思ってんのよ!ふざけんじゃないわよっ!」
「イヤ、ちげぇって。してねぇから、マジで」

急に勢いを落とした和也を見て、前方に座っていた人達が同時に噴き出す。あぁ、忘れてた。この2人の存在を。
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