とあるアイドルの恋愛事情 【短編集】
「サキの負けだよ」
「だなー。とわわの言う通り。ってか、これが噂の「ユナちゃん」だろ?」
「何?噂って。知ってんじゃん、優奈のこと」
「あー、ダメダメ。「優奈」って呼ぶとコイツキレるよ」
「は?」
「ちょっ…マキ!」
あぁ、何だ。と、得意の嫌ぁな笑みが見えた。何がわかったというのだろうか、この変態男には。
「妬いてたんだ。俺が「ユナ」って呼ばずに「優奈」って呼ぶから?」
「そー。「俺が特別じゃねぇのかよー!」って荒れまくってたから、コイツ」
「なるほどねー。イヤイヤ、サキもカワイーもんだ。仕方ないじゃんねぇ?カワイー彼女のお姉サマなんだし」
「だろ?だから言ってやったんだよ。「そんなに気になんなら暫く連絡すんな」っつって」
「あー、それでね」
「で、連絡再開するタイミング逃してやんの。バカだろ?コイツ」
バカだ…コイツ。ホントに、バカだ。
そりゃぁ確かに、7年も付き合ってきたらお互いのこと知りすぎて解らなくなることも多々あるけど…それでも…
「ホント…面倒くさい、あんた」
好きすぎて、面倒くさい。
なんて言うわけはなくて、あたしの一言にまたキレてた和也を永久が宥めていた。
「着いたけどー?」
「ホラ!着いたって!降りるよ、サキ」
「はっ!?」
「マキ、悪いけど家まで送ってやって。サキさえちゃんとしてくれればソッコー終わるから。場所は優奈に聞いてね」
「おぅ」
強制的に車から降ろされたあたしと和也は、チェンジ!とばかりに腕を引いたり押したりされ、結局あたしは助手席に納まってしまった。それを見て一段と不機嫌な顔をする和也の腕を引き、バカで変態でお節介な妹の彼氏は爽やかな笑みを見せる。その笑顔の裏側には、ホントもう…何と説明すれば良いのか解らないくらいにどす黒い笑顔が隠れているのだけれど。
「和也」
「あぁ?」
「ケーキで許したげる」
「はぁ?」
「お土産。吉田君家の」
「いつものヤツね」
「そっ。早く帰って来なさいよ?」
「わぁかってるっつーの」
ケンカをする度、和也が買って来るケーキ。申し訳なさそうな顔をして、いつも新作ケーキの前で両手を合わせる。中学生だった頃から変わらないそんな情けない姿が、実はあたしのツボだったりする。
「さぁ、頑張って仕事すっかな~」
「珍しい…サキがヤル気出してるよ」
「あっこのケーキ屋、閉まんの早ぇんだよ。オヤジさんに電話しとかなきゃ」
何度か振り返る和也を見ながら、「元気で良かった」と心の中で独り言を。良い彼女じゃない、あたし。なんて褒め言葉も忘れずに。
そんな、とあるアイドルとあたしの恋愛事情。
「だなー。とわわの言う通り。ってか、これが噂の「ユナちゃん」だろ?」
「何?噂って。知ってんじゃん、優奈のこと」
「あー、ダメダメ。「優奈」って呼ぶとコイツキレるよ」
「は?」
「ちょっ…マキ!」
あぁ、何だ。と、得意の嫌ぁな笑みが見えた。何がわかったというのだろうか、この変態男には。
「妬いてたんだ。俺が「ユナ」って呼ばずに「優奈」って呼ぶから?」
「そー。「俺が特別じゃねぇのかよー!」って荒れまくってたから、コイツ」
「なるほどねー。イヤイヤ、サキもカワイーもんだ。仕方ないじゃんねぇ?カワイー彼女のお姉サマなんだし」
「だろ?だから言ってやったんだよ。「そんなに気になんなら暫く連絡すんな」っつって」
「あー、それでね」
「で、連絡再開するタイミング逃してやんの。バカだろ?コイツ」
バカだ…コイツ。ホントに、バカだ。
そりゃぁ確かに、7年も付き合ってきたらお互いのこと知りすぎて解らなくなることも多々あるけど…それでも…
「ホント…面倒くさい、あんた」
好きすぎて、面倒くさい。
なんて言うわけはなくて、あたしの一言にまたキレてた和也を永久が宥めていた。
「着いたけどー?」
「ホラ!着いたって!降りるよ、サキ」
「はっ!?」
「マキ、悪いけど家まで送ってやって。サキさえちゃんとしてくれればソッコー終わるから。場所は優奈に聞いてね」
「おぅ」
強制的に車から降ろされたあたしと和也は、チェンジ!とばかりに腕を引いたり押したりされ、結局あたしは助手席に納まってしまった。それを見て一段と不機嫌な顔をする和也の腕を引き、バカで変態でお節介な妹の彼氏は爽やかな笑みを見せる。その笑顔の裏側には、ホントもう…何と説明すれば良いのか解らないくらいにどす黒い笑顔が隠れているのだけれど。
「和也」
「あぁ?」
「ケーキで許したげる」
「はぁ?」
「お土産。吉田君家の」
「いつものヤツね」
「そっ。早く帰って来なさいよ?」
「わぁかってるっつーの」
ケンカをする度、和也が買って来るケーキ。申し訳なさそうな顔をして、いつも新作ケーキの前で両手を合わせる。中学生だった頃から変わらないそんな情けない姿が、実はあたしのツボだったりする。
「さぁ、頑張って仕事すっかな~」
「珍しい…サキがヤル気出してるよ」
「あっこのケーキ屋、閉まんの早ぇんだよ。オヤジさんに電話しとかなきゃ」
何度か振り返る和也を見ながら、「元気で良かった」と心の中で独り言を。良い彼女じゃない、あたし。なんて褒め言葉も忘れずに。
そんな、とあるアイドルとあたしの恋愛事情。