太陽がくれた時間
これ以上生きて、何の意味が有るの? その言葉を口に含んだまま
琴美の身体は解体の決定したビルの屋上から
八月の日射しを浴びながら地面へ向かった。

小さい頃、親の不注意で傷つけてしまった額の傷が原因で
学校ではよく友達にいじめられた。
内向的な性格が災いし高校での生活は
琴美にとっては苦痛の日々であった。

ビルの屋上までの間に頭に浮かんだのは
集めていた、たくさんのキャラクターぬいぐるみ
小学校の時、とても仲の良かった友達が転校していってしまったこと
家族で遊びに行った時の写真

想い出たちは屋上に残された。

太陽は一部始終を見ていた。

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