太陽がくれた時間
次の日も、その次の日も
数匹ずつ仲間が減っていった。

小学校の時の転校していった友達のことを思い出した。

ある日、ビニール手袋が、琴美の身体を掴んだ。

別室に連れていかれ、そして脚に注射をされた、

一匹一匹、隔離されたケースの中で仲間が悶えているのがわかった。

ケースに戻されるとすぐに、ぐったりとしてきた。
研究員の話が聞こえてきた。

『もうすぐ完成するぞ、お前らも頑張ってくれよ。』
と言うと琴美の入ったケースを、こんこんと叩いた。

そ、そうか、私は薬物実験用のねずみだったんだ。
せっかく、仲間ができて楽しい日々が過ごせたのに。
今迄に、味わったことのない痛みと、苦しみが琴美を襲っていた。

『もっと、楽しい時間を過ごしたい、もうちょっと生きていたい。』

薄らいでいく意識の中で、琴美が眼にしたのは、壁に貼られた
死んでいった仲間のネズミの写真だった。

人間って勝手なんだ!!、何の罪もないネズミを
こうして殺していく、人間なんて大嫌い!!

琴美は、ケースの中で、短いハツカネズミとしての命を終えた。
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