太陽がくれた時間
儚い命
夏の日射しは池の底の足の生えてきた琴美を照らし、
あたかも琴美の行動を観察するかの様に水面で乱反射した。

ある秋の雨の朝、琴美は廃屋に続く野道を跳ねていた。
その時だった。
傍らの草影から蛇が琴美に飛びかかり、
後ろ足から胴までが蛇の口にくわえられた。
必死にもがき蛇から逃れようとするが、蛇もまた必死だった。

腹減ってんだ、悪いな!

冗談じゃ無いわよ!馬鹿蛇!離せ!

道の真ん中で戦いは続いた。

オートバイが水たまりを避けながら走ってきた。
蛇はオートバイに気を取られ、琴美を落とした。
ありったけの力で跳ね、林を抜けて池へ戻った。
小雨が跳ねる池は妙な静けさだった。

何故、、、
死にたくない、、、
生きたい。

痛みを紛らす為、虫の息の琴美は人間であった最後の朝を思い出した。
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