TIME WAR
言いかけた時にはもう信平はいなかった
……言い逃げ。


ゆっくり腰を上げてすり減っていた靴を鳴らす。

「明日……」


チクタクチクタク。
時計の針がときを刻んでいた。


只今、2010年8月30日……


過去2010年6月19日AM:8時


「この時間、もう起きてた?」


「うん」


昨日と同じ場所で私と渉君は話をしていた。
当たり前だけど


雨がシトシト降っていた

「行ってくるね」


渉君に小さく手を挙げて渉君の家に向かう。
遠くから渉君が心配そうにこっちを見ていた


家の前……
インターホンを押すときに、昨日の2階準備室を開ける時と雰囲気が似ていた


ピンポーン。
家の中から音が聞こえた

「はい……」


「あ、初めまして?」


出てきたのは歩君だった。眉間にシワを寄せて私をみおろす


「誰……」


「あ……えーっと斎藤ちやこです」


玄関をバタンと閉める。 近くに歩いて来る歩君に後ずさる


「ちやこね、で?」


「あ、えっと今日ねどこか行くんでしょ!?」


私の言葉に眉間のシワは更に濃くなった。
歩君はまくっていた服の袖を下ろしながら


私に背中を向けて


「兄貴ー?なんか意味わかんない奴が来てる」


といった。
……失礼な。意味わかんない奴って


私は真っすぐ向こうの物陰に隠れる渉君を探した

(たぶん、兄ちゃんが出てくると思う)


信平が出てくるってこと?私の疑問は渉君に伝わったみたいでこくりと頷いた


「意味わかんない奴って何だよ歩」


信平が中から顔を出した。あ、 信平だ。


いや当たり前に信平、何だけど
私が信平を知っていて、でも信平が私を知らない から


私たちはきっとチグハグな表情をしていたんだと思う


「うちに何か用?」


「あ……えーっと……これからどこか行きますか?」


信平の声にはっとした
信平はいつの間にか目の前にいて


「これから?まぁプライバシーかな。それがどうかしたの?」


あ……笑った。
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