その道が消える前に

心からの願い

「お父さん、お願いがあるの・・・」

志乃の父・正明は悪い人ではなかった、ただ正明が生きてきた道は親から与えられた道だった。
その為、お見合いで結婚をし、何不自由なく生きてきた。

「どうした?」

その優しい父の口調に志乃の中の罪悪感が胸にささる

「美和ちゃんのおばあちゃんに一緒に会いにいきたいの」

「美和ちゃんって?」

「高校の大親友なの、高校ももうすぐ卒業だから・・・」

「おばあちゃんのおうちはどこにあるんだ?」

 「北海道・・・一緒に行きたいんだけど」

その時、隣で話を聞いていた母・美枝子が心配そうに立ち上がる

「志乃、北海道って・・・二人で?」

「うん、お母さん・・・だめ?」

「あなた・・・」

美枝子はいつものように正明に意見をゆだねる

「二人ではだめだな・・・」

志乃はどうしても、旅行へ行きたいという気持ちがこみ上げてきた

「お願い、どうしても、どうしても行きたいの・・・お願い」

初めてみる、志乃の真剣な表情に困惑する正明と美枝子だった
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