ストロベリーライン・フォーエヴァー
「この子は前原麻里ちゃん。いやもう、びっくりしたわ。この子があなたを海岸で見つけて知らせてくれたのよ」
「どうして……どうしてそんな余計な事したんだ?!」
不意に美咲が大声を上げた。
「なんで、そのままほっといてくれなかったのよ?なんで、そのまま死なせてくれなかった……」
麻里と呼ばれた女の子は「ヒッ」と怯えた声をあげて吉川の背中にしがみついた。吉川もハッとした表情で美咲の顔を見つめた。そして何かを悟ったように、小さくうなずいた。思わずどなり散らして荒い息をしている美咲の両肩に手をかけ、吉川は子供をあやすような優しい口調で言った。
「さあ、もう少し眠った方がいいわ」
吉川に肩を押されて布団に倒れこんだ美咲は、そのまま床に吸い込まれるような感覚を覚え、途端にまた深い眠りに落ちた。
再び目が覚めた時にはもう夕暮れ時になっていた。布団の周りには誰もいなかった。布団をはねのけると、美咲は自分が薄い紺色の浴衣に着替えさせてもらっているのに気付いた。
障子を開けて板ぶきの広い廊下に出ると、少し離れた柱の陰からあの麻里という小さな女の子が顔の半分だけをこちらにのぞかせて、じっと美咲の方を見つめていた。まだ少し怯えているのかもしれない。
美咲は廊下にしゃがんで出来るだけ穏やかそうに見えるよう作り笑いを浮かべ、麻里を掌で手招きした。最初はおっかなびっくりという感じで廊下に出てきた麻里は、美咲の傍まで来ると抱きつくように体を預けてきた。元来人なつこい性格なのだろう。美咲は麻里の頭をなでてやりながら尋ねてみた。
「さっきはごめんよ。ここは何て町?さっきの先生はどこ?」
麻里は微笑みながらも、首をかしげて困ったような表情を見せた。まだ小学校に上がる前の年齢らしく、町の地理なんて事は分からないのだろう。麻里に手を引かれて居間らしい広い畳敷きの部屋まで行くと、庭から吉川が中に上がって来ているところだった。手には美咲のライダースーツが抱えられている。どうやら庭で干して乾かしてくれたらしい。
「どうして……どうしてそんな余計な事したんだ?!」
不意に美咲が大声を上げた。
「なんで、そのままほっといてくれなかったのよ?なんで、そのまま死なせてくれなかった……」
麻里と呼ばれた女の子は「ヒッ」と怯えた声をあげて吉川の背中にしがみついた。吉川もハッとした表情で美咲の顔を見つめた。そして何かを悟ったように、小さくうなずいた。思わずどなり散らして荒い息をしている美咲の両肩に手をかけ、吉川は子供をあやすような優しい口調で言った。
「さあ、もう少し眠った方がいいわ」
吉川に肩を押されて布団に倒れこんだ美咲は、そのまま床に吸い込まれるような感覚を覚え、途端にまた深い眠りに落ちた。
再び目が覚めた時にはもう夕暮れ時になっていた。布団の周りには誰もいなかった。布団をはねのけると、美咲は自分が薄い紺色の浴衣に着替えさせてもらっているのに気付いた。
障子を開けて板ぶきの広い廊下に出ると、少し離れた柱の陰からあの麻里という小さな女の子が顔の半分だけをこちらにのぞかせて、じっと美咲の方を見つめていた。まだ少し怯えているのかもしれない。
美咲は廊下にしゃがんで出来るだけ穏やかそうに見えるよう作り笑いを浮かべ、麻里を掌で手招きした。最初はおっかなびっくりという感じで廊下に出てきた麻里は、美咲の傍まで来ると抱きつくように体を預けてきた。元来人なつこい性格なのだろう。美咲は麻里の頭をなでてやりながら尋ねてみた。
「さっきはごめんよ。ここは何て町?さっきの先生はどこ?」
麻里は微笑みながらも、首をかしげて困ったような表情を見せた。まだ小学校に上がる前の年齢らしく、町の地理なんて事は分からないのだろう。麻里に手を引かれて居間らしい広い畳敷きの部屋まで行くと、庭から吉川が中に上がって来ているところだった。手には美咲のライダースーツが抱えられている。どうやら庭で干して乾かしてくれたらしい。