女の隙間、男の作為

「なにひとりで笑ってるの?」

相変わらずカラスの行水かってくらいシャワーの時間が短い。
あたしがビールを飲みきる前にリビングに戻ってきてしまう。
そのことにも慣れつつある自分が恐ろしい。

「あたし、何やってるのかなーって考えたら笑えてきただけ」

恋人でもない相手と何度もセックスをして。
ツマラナイ映画を見ながらビールを飲む。

恐ろしいことにそれが心地好くてつい同じことを6日おきに繰り返してしまうのだ。
身体だけの関係かと聞かれたら否定はできないけれども、快楽目的のそれとも少しだけ違う気もする。

結城はあたしを追い詰めることは何も言わない。
甘ったるい言葉は必要最小限だし付き合おうとも言わないし、この事実をオフィスには絶対に持ち込まない。

あたしはあたしで絶対に結城の部屋に自分の私物を残さないし、他の女達が置いていった備品をひたすら消費し続けている。
正解か不正かと問われたら確実に後者だし、とても誰かに打ち明けられるような関係でもない。

それでもなぜかとても心地好いのだから困ったものだ。

弟が帰ってきているからしばらく行けないと言えば、残念だと言ってくれる。
他の女と寝ているのだろうと思えば、そうでもないらしい。
あたしはそれを喜んでいいのか戸惑っていいのかすらわからず、曖昧な返事しか返せない。

それでも飲み会の度に女の子を口説いていたあの男が、自分からは一切動かなくなったのも事実だ。

『女の子のところにいかなくていいの?』

酔ったついでに聞いてみたことはあるけれど、

『俺になんて答えて欲しいわけ?』

小賢しい答えしか返ってこなかったのでそれ以上の追及はやめた。


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