女の隙間、男の作為
そして、不機嫌な男の方はといえば…
『…怒ってますね』
『怒らないと思う根拠は何なわけ?』
『スミマセン』
爆弾発表の後は客先との打ち合わせのためほぼオフィスにいなかった結城と話ができたのは、仕事が終わってからになった。
平日にしては珍しく(この場合は必然的に)結城のマンションに足を運び、当然というか何と言うか…夏本番に近づき暑いというのにソファでこれ以上ないほど密着した状態での話し合いになった。
結城が怒るのも当然だとちゃんとわかっている。
だから言い訳はしないと部屋に来る前に腹を括った。
『俺にいつ言うつもりだったの?てか、言うつもりあったわけ?』
逃げようにも逃げられないこの距離。
口を開けばその口を塞がれるという理不尽な尋問に早くも意志が根元から折れそうになる。でもこれは甘んじて受け入れるしかない。
こんな強引なのは結城らしくない。
それくらい憤っているということだろう。
噛みつかれるようなキスを相手が飽きるまで続けて、解放されたころには答えるべき彼の問いが何だったのかすら曖昧になってしまいそうだ。
『箝口令が敷かれてたんだもん』
“それで?”とその強い目が言っている。
ですよね。もちろんこれで納得してもらえるとは思っていない。
あたしはただの一度も相談することもなければ、朝礼より先に打ち明けることすらしなかった。
『毎日顔合わせてて、ついでに毎週ココで俺と寝ておきながら、一度も打ち明けようとは思わなかったわけ?』
それはまさにその通りだ。
日中の業務ではどこまでもあたしがコイツを甘やかして、週末の夜になれば逆にコイツがあたしをとことん甘やかす。
そんなことを日常にしつつあったのに。
それでも、あたしは。