女の隙間、男の作為
そもそもあたしはそんなものでこの男のことを縛るような真似はしたくない。
浮世を流したこの男が1年間も禁欲生活なんてできるはずがないのだから、それを強要するようなことはなにひとつしたくない。
傍にいないことを選択したのは自分だもの。
『あんたが1年後も同じことを言えたらその時に考えればいいじゃない』
『たかが1年くらいで揺らがないっての』
『なら、1年後でも問題ないでしょ?』
『ダメ。待ちきれない』
『ワガママ言うな』
『カノがワガママ』
コイツ…!案外しぶとい。
あぁもうどうすればいいんだ。
こんな形で結婚するなんてどう考えてもおかしいし(というかそれほどにコイツのことがすきなのかいまだに微妙だし)、1年間あれば冷静に色々と考えられると思ったのに。
いったいどうしてこんな展開に。
『慌しく結婚するなんて絶対嫌』
涙ながらに訴える作戦は意外と効果があったみたいだ。
額をぴとっとくっつけて至近距離で訴える。
苦肉の策だけれど背に腹は変えられない。
『…浮気しない?』
『だーかーらーなんであたしが浮気する設定なのよ』
あたしはそんなに男にだらしないタイプじゃないっての。
浮気するなら確実にお前だろうがと声を大にして言ってやりたいけれど、それすらも面倒になってきた。
早くこの話題を終わらせたい。
『1年後に確実に結婚してくれるなら…婚約だけでもいいか…』
あぁでも独身最後に別の男と…とか思われても嫌だしなぁと懲りずにブツブツと言っている。
アホだ。仕事はできるけれどコイツは間違いなくアホだ。
『あたしはこれから結婚なんかより仕事の引継ぎとか色々と忙しいので、この話は終わりたいと思います』
『おい!終わらすな!』
『あーもうめんどくさい。10月までに考えるからさ。
とりあえずエアコン入れようよ。この部屋暑いって!』