女の隙間、男の作為
「部長は毎日出社してるかもしれないけど、わたしは貴重な出社日なので有効活用したいんです。用事がないなら席に戻ってくださいよ」
「働き者だなぁ。感心感心。あ、今朝言ってた携帯見つかった。なんか受付にあったみたい」
「へぇ。よかったね」
おそらくあの子はテーブルの上に放置したんだろうな。しかし、あたしもエネルギー不足だったとはいえ、大人気なかったな。
『あの男の仕事関連の連絡先ならあたしのココに全部入ってるから問題ないしね』
あれは半分真実で、半分嘘だ。10年前ならいざ知らず、さすがに隣の部署の部長の関係者まで全部は把握してない。まぁバレないからいっか(前向きなのがあたしの長所だ)
7年前に結城のしつこさに負けて結婚して以来、あの手の若い女の攻撃(嫌がらせなのかな?)は少なくないし、慣れている。振り返れば、独身時代から結城の取り巻きに敵意を向けられてきたのだ。むしろこれは日常だ。
「よし! 仕事だ!」
いくつになろうと、働き方が変わろうと、結婚しようと、あたしはあたしだ。仕事があたしの最優先事項ということに変わりはない。