女の隙間、男の作為

「カノちゃん。来月の世界会議の資料作り手伝って(はぁと)」

(えーやりたくない)

「桃源の上懐石!」

「いや、さすがにそれは無理」

(ケチ!交際費で処理してよ)

「利苑の上焼肉コースとエビス!」

「…15日(給料日)以降なら」

「やりましょう!」

やったやった!や・き・に・く!
ビール!ビール!エビス!
物事は何事も交渉が大事よね!

「詳細はメールで送っておいてくださーい」

(ルンルン)

その資料がいかに工数がかかるものかは重々理解しているけれど、逆に言えば重々理解している人間が他にいないということでもある。

どう迂回しても結局同じ道に合流するのならそれは早い段階のほうがいい。
そして素敵なオプションがあるほうがいい。

“瑞帆ちゃーん!来週は焼肉だぞー!あんたも来るっしょ”

瑞帆からは即座に“行く”との返事が返ってきた。
部長の顔色がやや青ざめたように見えたけれどそれは深酒の所為だと思い込むことにした。
(後で濃い目の珈琲を淹れてあげよう)
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