女の隙間、男の作為

「なぁ、カノー」

「なによ」

「今から俺の部屋来る?」

「行くわけないでしょ」

キスはしないと言い切ったくせに、平気で部屋に誘う。
結城とはそういう男だ。
もう帰ろうと思ったのと同じタイミングで結城は腕を解いた。

「でも俺はすごい自信あるよ」

「何のよ」

「カノのこと満足させる自信」

“バカ言うな”と返すよりも先に口を結城の大きな手で塞がれた。

「俺はカノがどういう女か知ってるから、カノがどうすれば喜ぶか、感じるか、全部わかるってこと」

そんなことあるわけない。
長年連れ添った夫婦でもあるまいし、そんな芸当ができるわけがない。

それなのに。
どうしてコイツはこんなに自信満々なの?

「どう?試したくならない?」

「あたしがあんたのこと好きじゃないのに気持ち良いわけないでしょ」

女は感情でセックスする生き物なの。

「大丈夫。それをカバーするくらい俺がカノのことすきだから」

“女の子は愛されてなんぼの生き物でしょ?”

あぁ神様。
どうしてあなたは結城という男にこの容姿をお与えになったのですか?
テロリストに核兵器を渡したようなものですよ?

“いいかげん素直になれば?”

いったい誰に素直になると言うのだ。
あたしは自分の望みに素直に生きているのに。
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