女の隙間、男の作為
「それであたしが頷くと思ってんの?」
それは何処にも根拠のない言い分だ。
でも滅茶苦茶だからこそ無視できない。
「ううん。思ってない」
“でも言っておきたかっただけ”
キスもしていないのに彼の満ち足りた表情は何だろう。
どうしてあたしは先の男に投げ捨てたように“嘘くさい”と言えないのだろう。
身体の中心に静かな熱が灯ったのが自分でもわかる。
でも、認めるわけにはいかない。
少なくとも今は。
「俺は無理矢理キスもしないし抱いたりもしない。
でもカノが1%でもその気になったら全力で応えるよ」
“たとえそこに気持ちが伴ってなくてもね”
それは優しさ?ワガママ?
わからない。
わからないけれど許されている気がした。
何を?――何かを。
ふさがらない隙間に何かが入り込んだ感触もある。
あぁ確かにこの男はあたしという女をよく理解している。
勝手に選択肢を決められるのも後に言い訳の余地と逃げ場を残す優しさも大嫌い。
結城は選択肢も何も用意せずあたしに全ての決定権を握らせ、後の言い逃れの余地も逃げる場所も取り上げた。
それは過去出会った中で誰もしてくれなかったことだった。
でも。
その手を握るにはまだ早い。
あたしはバカみたいに何かを恐れていた。