女の隙間、男の作為
“その時”ですらあたしの望みがわかっているかのように。
発したのはただ一言だけだ。
“いい?”
あたしは瞬きなのか頷きなのかわからない仕草でイエスを伝え、数年ぶりに他者を迎え入れた。
忘れかけていた圧迫感に眉を寄せ腰を引く。
相手はそれを無理矢理引き止めることなく、あたしが引き返すのを辛抱強く待っているようだった。
既に自分だけが三度の頂上を見ている状況で、逃げ出せるほど図太い女じゃない。
確かに身体が記憶しているサイズより幾分か上回っている気もするけども、入りきらないわけじゃない(と思う)。
「ごめん。もう大丈夫だから」
その背中に腕を回して、その腰に脚を絡めて。
精一杯の合図。
「一気に挿れるのもったいないと思ってただけ」
もしもコレが彼のいつもの手順などだとしたら、女の子達が夢中になるのも仕方ないと思った。
こんなにも大事に扱われたら、女は誰だって全てを委ね同時に全てを手に入れたくなるだろう。
「全部、入った」
まさに全てを埋め尽くされたような感覚。
同時に自分のなかの隙間がピッタリ埋まったような気がしてしまった。
「カノ、わかる?」
「なにが?」
全部入りきったところで、カノの奥に当たってる。
これって俺のがカノのココにピッタリってことじゃない?
いつもの結城のいつもの営業トーク。
でもいつもと違うのはそれを右から左へ受け流せる自分がいないことだ。
だって、ほんとうに、ピッタリ嵌ってしまった。
その後の動きですら、あたしを優先しているようだった。
もういいかげん自分の欲望を優先させればいいのに、と思うほどに。
緩急をつけてはあたしを満たし、決してあたしを置き去りにすることなく、求めるより少しだけ多い快感をくれる。
もう本当に我慢できない、という時になってようやく宥めるような声が聞こえてきた。