女の隙間、男の作為

「俺もあともうちょいだから。もう少し我慢できる?」

首を縦に振っておきながら、我慢なんて全くできそうもなかった。
それでも必死に最後の一線を踏みとどまって、怒涛の律動に耐える。

苦しくて嬉しくて気持ちよくてツライ。
セックスを別の言葉に置き換えるとしたら、それはエゴに近い。
恋なんて生易しいものでも、愛なんて図々しいものでもなく、生々しいエゴだ。

相手を手に入れたい、相手に奪われたい、気持ちよくなりたい、気持ちよくさせたい、満たされたい、満たしたい。

この薄汚れた行為には二人分のエゴが所狭しと詰まっている。

エゴにとらわれた二人が色に溺れる刹那をエクスタシーと呼ぶのだろう。
少なくともこの瞬間はそれが正しいと信じている。

あたしのエゴと結城のエゴが偶然にも同じ形を為し、二人は同じ感覚に溺れたのだろう。

薄い膜越しに感じた熱い飛沫に、今度こそ疑いようもなく全ての隙間を埋められてしまったのだとわかった。


  なんて満ち足りた気分なのだろう


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