シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
『え~、ゴホン』
クラウン王子から、やけに低い声調の咳払い。
「はっ!!! 王子様を待たせてしまうなど、何て失礼なことを!!!」
心に占めるはクラウン王子。
「王子、只今お傍に~」
ふらふらふら…。
しかし。
やはり久遠に手を引かれて、あたしは王子の元に辿りつけない。
「見誤った…。ここまで"あんなもの"にせりが夢中になってしまうとは…。これじゃあ本末転倒だ」
手を引きながら、久遠が何か言っていたけれど…?
「せり、よく見ろって!!
クラウン王子が大きすぎるだろ!!」
何故か焦っているようだ。
「そりゃあ王子様だから長身でしょうよ…」
「クラウン王子の足も長すぎる!!
足が完全にはみ出ているじゃないか」
「そりゃあ王子様だから足も長いでしょうよ…」
「何で納得出来るんだよ、君は!!! ふかふかの足からふさふさの足が出てるんだぞ!!? 明らかにおかしいじゃないか!!」
「ふかふかの足からふさふさの足が出て何がいけないの?」
あたしは、思い切り怪訝な顔をしたと思う。
「しかもふかふかの手からふさふさな手も出てる」
「ふかふかの手からふさふさの手が出て何がいけないの?」
益々もって判らない。
そこまで気持ちいい、王子様の肌を何で拒絶するんだろう。
何で久遠は此処まであたしと王子の仲を邪魔するんだろうか。
「だからあれは、どう見てもせりの為に用意したものじゃ…」
「あたしの為の…?」
「いや、違う。別にせりの為なんかじゃない」
久遠…。
一体どうしちゃったんだろう?
1人漫才がマイブーム?
「せり!!! 本物のふさふさは、オレだろ!!!?」
切羽詰ったような声を出して、遂には……久遠は自らの身体を差し出した。
あたしの手を掴んだまま、自分の毛を触らす。
ふさふさ…。
ふさふさ…。
ああ、気持ちいい…。
「あんな怪しさ満点のものより、オレの方が…」
その時だ。
『……ぷぷっ…ぷぷぷ。
がはははははは!!!』
王子様とも思えない程の、
がさつで豪快が聞こえてきたのは。