シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「ふらふらするな、せり」


冷たく…強い語調の…

それは――拒絶。


心が昔に戻っても、過ぎた時間は残酷だ。


「君は男を手玉に取るには、役不足だ。

オレを甘く見るな。


オレは…蜜を与えれば飛びつく、

安っぽい蝶とは違う。


ましてや――

ふらふらしてるいい加減な奴になど靡かない」


決意めいた抑揚のないその声が、心の何処かを抉っていく。


「あたしは別にふらふらなんて…」

「紫堂玲はどうした?」


どきっ。


そうだ、あたしは玲くんを…。


――ふらふらするな。


「せり。鼓動が早くなった事実を恋愛の拠り所にするな。

それなら紫堂玲は発作の度に恋愛をしているじゃないか」


「発作と恋愛とは…」


「せりなら、区別出来ない。

だから…ふらふらするんだ」


詰るように、苦しいように。

紅紫色の瞳はあたしに絡みついてくる。



「せりは、"危機的状況"が無理矢理早めさせた鼓動を、心の動きだと錯覚しているだけだ。


オレのことも――


紫堂玲のことも…」


そう言った久遠は、あたしから顔を背けた。

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