シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

・不安 玲Side

 玲Side
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『玲くん。大好きだよ?』



君が僕の名を呼び破顔する度、僕の鼓動は愛しさに早まる。

君の瞳に僕が映る度、僕の鼓動は嬉しさに早まる。


鼓動の早さは僕の生命の証。

それは時に、発作のような苦しさを伴うものだけれど。


確りと僕の生を刻み打っている。


その早さは…その脈動は、周囲の思惑にただ流されてふらついていた僕を、"今この瞬間"に繋ぎ止める楔となった。


"今この瞬間"に見るのは…愛に溢れた幸福な夢。


もし僕の未来の先に、僕が望む幸福があるのなら。


僕の早い鼓動は、時間に変わらないだろうか。

少しでも早く未来に進まないだろうか。


この身を置くのは"今この瞬間"。

心が望むのは"進んだ未来"。


そして。


苦しくて切ない今の心を、

"過去"と出来たのなら。


1つの身体の中で起こる時間の齟齬がもどかしくて。


だけど時を告げる僕の鼓動は…ただ空回り、無情な時間を進めさせるだけ。


僕の生と引き替えに、進んだ未来には…僕の望む芹霞がいなかった。



『玲くん。大好きだよ?』


言葉ではなく、君の心を。

僕だけに向ける、君の想いを。


僕だけに見せる衝動を。

僕だけに向ける激情を。


ただひたすらそれを願い続ける僕に、芹霞は言った。



『玲くん…

あたし思い出しちゃったの』



それは恐れていた言葉。

僕を凍らせる、呪いのような言葉。


どくん、どくん…。


僕の鼓動は、決まった未来へと僕を連れる。



『"お試し"なんて…

意味なかったね』



どくん、どくん…。



ボーン、ボーン、ボーン。


僕の鼓動に誘われるように…

何処からか…鐘の音が聞こえた。



『時間切れだね』



それが嬉しいとでもいうように、



『夢見る時間はお仕舞いだよ?


魔法は…あたしには効かない』



弾けるような笑みを見せた芹霞は、


『GAME OVER』


残酷な言葉で終止符を打った。



どくん、どくん…。


僕を待ち受ける未来には…

君はいないと言うの?

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