シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
ああ――。
電脳世界から取り入れた0と1を押し潰すまでの、虚数の圧感。
この塔から…
更なる虚数が沢山生じている。
出現したのは…
"約束の地(カナン)"という場所に意味があるのか?
それとも…
虚数を模倣して、虚数を消し去ろうとした僕に対しての、多勢による反撃か?
不安になる。
「芹霞……」
巻き込まれていないだろうか。
「久遠様がついて居る。心配なのは寧ろ…」
蓮は言いにくそうに、金の瞳を細めた。
櫂、か?
「"凜"も…久涅も帰ってこないのが気になる」
「凜?」
誰だろう。
「え、ああ…まあ、似た血だということで」
由香ちゃんが曖昧に返事をする。
凜…。
何だ、今。
何かに反応したように、脳裏に閃いた一瞬の映像は。
漆黒の長い髪を靡かせ…
鋭い眼差しをした…
「まさか…ね」
僕は何を考えてしまったんだ。
ありえないだろう、櫂の"女装"なんて。
第一櫂の矜持が許さないだろう。
今までとことん拒み続けてきたんだ。
「師匠…多分。
それ正解」
由香ちゃんは、八の字眉でそう言った。