シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そうだ、こいつもいたんだ…。


まるで視界に入っていなかった。


処処…毟られた毛皮。


残る毛をふさふさと揺らした久遠が、身を捩って笑っている。


いつもすました顔で、笑うとしても馬鹿にしたような笑い方しかしない…元来、侮蔑と嫌悪以外の表情に乏しい男が、全身で"笑い"を表現している。



「笑っていいのか同情していいのか判らないな。あははははは!!!」


笑っているだけじゃないか。



「駄目?」


こてんと首を左に傾げた芹霞が、俺を見遣る。


「お友達、駄目?」


今度は反対側にこてんと首を傾げる。


きらきら、きらきら。

目が期待に輝いている。



俺は――

手首の布を見せた。


――紫堂櫂を愛してる!!!


これは芹霞の心。

だからこそ俺は、自分に繋ぎ止めてきた。


芹霞はその布をじっと見つめて。




「それ、なに?」



そう言ったんだ。


え?

は?



「今流行のファッション?」



何で…判らないんだよ、芹霞。


「そう言えば…久涅も布が欲しいとか言ってたし…あ、久涅にも顔似てるね」


芹霞は…冗談を言っているようには見えなかった。

純粋に不可解な顔をしている。

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