シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「喋れないのに喋ろうとするな。聞いている分には本当に哀れで涙を誘って仕方が無いけれど…くくくくく、あははははは!!!」
絶対、哀れんでなんていない。
ただ楽しんでいるだけの癖に。
喋れる久遠が少し口添えしてくれればいいのに…って思わないこともないけれど、性格悪いこいつが、俺の益になるよう気を利かせて立ち振る舞ってくれるなんて、天地がひっくり返ってもありえない。
「……何」
ほら、すぐそうだ。
紅紫色の瞳を冷たくさせる。
こいつが厄介なのは、こっちの心情を読み取っていても、知らないフリをしたまま、お高くとまる所だ。
「オレに期待しているなら無駄だ。せいぜいその布自慢げにちらつかせて、せりにやられてドツボに嵌って沈んでいろよ。何だよ、全然じゃないか。何も変わっていないのに、何偉そうにしてたんだよ、凜」
状況は、変わったんだ!!!
――紫堂櫂を愛してる!!!
ああ、録音でもしてればよかった!!!
「凜!!? 凜ちゃんって言うの!!? 久遠の知り合い!!?」
芹霞が、久遠の言葉の最後だけに食いついた。
その前までの言葉は、さしたる疑問も湧かないらしい。
「ん…新たに雇ったメイドだ、メイド。口が聞けない、無愛想な奴だ」
「お口が聞けないの!!? それなのに、お友達になってくれるって言葉にしてくれるなんて…」
俺は友達になるなんてひと言も…。
それより、気付け。
頼むから、俺のことに気づいてくれ。
お前の"ゲテモノ"好きは判ったから、この感動の対面を愛に満ちたものにしてくれ。
――紫堂櫂を愛してる!!!
俺の12年の恋を早く成就させてくれ!!!