シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「せり。凜は鉄面皮で無愛想で性格が悪いから、男はおろか…同性の友達が1人もいない可哀相な奴なんだ。せりと友達になれて、凄く喜んで、目をうるうるさせてるぞ? 見てみろよ、何か言いたげな切実なあの目」


黙れ、久遠!!!


どうしてお前は…


「そこまで悦んでくれるの!!!?

嬉しい、嬉しい、嬉しい!!!」


久遠の笑い声。


「凜ちゃん、大好き!!!」


目をきらきら輝かせた芹霞が、するっと俺の腕に手を絡めてきた。


「凜ちゃん、親愛のぎゅうしてもいい?」


きらきら、きらきら。


両手を広げて、俺に近寄ってくる芹霞。


途端に久遠の笑い声が止る。


「…せり」


不機嫌そうな久遠の声。


「せりは、ティアラ姫とクラウン王子とオレの毛と凛と…どれが一番だ?」


そう詰め寄りながら、俺から芹霞を引き剥がした久遠は、その手を己の毛皮に触らせている。


「え、そんなこと言われても…」


生物的にも勝るはずの俺が、

"どうでもいいモノ"と同レベルか!!?


結構…ショックだ。


ふさふさ…。

ふさふさ…。


「でも久遠の毛も捨てがたいし…くしゅん」


芹霞がくしゃみをする。

俺がコートを脱いで着せようとする前に、


「せり。特別に貸してやる」


あの久遠が毛皮を脱いで芹霞に手渡したんだ。

旭と司狼がどんなに寒がっても完全無視した久遠が。
< 1,068 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop