シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「せり。凜は鉄面皮で無愛想で性格が悪いから、男はおろか…同性の友達が1人もいない可哀相な奴なんだ。せりと友達になれて、凄く喜んで、目をうるうるさせてるぞ? 見てみろよ、何か言いたげな切実なあの目」
黙れ、久遠!!!
どうしてお前は…
「そこまで悦んでくれるの!!!?
嬉しい、嬉しい、嬉しい!!!」
久遠の笑い声。
「凜ちゃん、大好き!!!」
目をきらきら輝かせた芹霞が、するっと俺の腕に手を絡めてきた。
「凜ちゃん、親愛のぎゅうしてもいい?」
きらきら、きらきら。
両手を広げて、俺に近寄ってくる芹霞。
途端に久遠の笑い声が止る。
「…せり」
不機嫌そうな久遠の声。
「せりは、ティアラ姫とクラウン王子とオレの毛と凛と…どれが一番だ?」
そう詰め寄りながら、俺から芹霞を引き剥がした久遠は、その手を己の毛皮に触らせている。
「え、そんなこと言われても…」
生物的にも勝るはずの俺が、
"どうでもいいモノ"と同レベルか!!?
結構…ショックだ。
ふさふさ…。
ふさふさ…。
「でも久遠の毛も捨てがたいし…くしゅん」
芹霞がくしゃみをする。
俺がコートを脱いで着せようとする前に、
「せり。特別に貸してやる」
あの久遠が毛皮を脱いで芹霞に手渡したんだ。
旭と司狼がどんなに寒がっても完全無視した久遠が。