シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
凜ちゃんが、着ていた黒いコートを脱いで、その端を手にして…それを大きく振るようにして、宙で身を翻しながら、夜空高く舞っていた。
しなやかな身体のバネに驚嘆すると共に、長い黒髪を風に靡かせて跳躍する姿は…あまりにも美しい戦女神のようで。
思わず息を飲んだ。
そして――
着地と同時にコートを地面に叩き付けた時、
似つかわしくない金属音がした。
からんと地面に1つ零れ出てきたのは…
小さな細身の銀のナイフ。
手術で使うメスのような…
「制裁者(アリス)!!!?」
過去幾度も目にしたその武器。
凜ちゃんはコートで沢山の武器の攻撃を防いでくれたらしかった。
そして凜ちゃんは空に舞い上がる。
スカートを翻し、闇夜に漆黒の姿で、ひらひらと。
華麗に…何一つ無駄のない動きで。
綺麗だと思った。
格好いいと思った。
見惚れてしまう。
あたしも凜ちゃんのように、強く格好よくなりたいと思った。
あたしの指は、自然と…唇に触れていた。
強烈な思い出。
同性からの熱烈ちゅう。
親愛を行きすぎたそれは、情愛にも似ていて。
もしかして…凜ちゃんは激しい恋をしているのかもしれない。
それを伝える手段が無く…
あまりのもどかしさに…身体で体現したのではと。
もしかして…
ねえもしかして…
凜ちゃん…
久遠に恋してる?
あたしにキスしたのは、嫉妬!!?
だからずっと訴えてたの?
久遠に手を出すなって。
そう思ったら、それが正しい気がしてきた。
なんだ、あたしは当て馬か。
久遠も焦って引き剥がしたと言うことは…
満更でもないのかな。
あの女に興味なさそうにしている久遠が、凜ちゃんをメイドに雇ったくらいだ。
しかもあんな美人だし。
ああ、だから…。
あたしが久遠にぐらりときた時、久遠は拒んだんだ。
そうか。
これであたしの初恋は、失恋確定だ。
…ちくりと胸は痛むけれど、これは秘密にしておこう。
久遠と凜ちゃん…。
これは友達として、なんとかせねば。