シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
・選択 桜Side
桜Side
*****************
横たわったまま意識のない七瀬紫茉。
目の前には、"怒"の表情に立つ七瀬周涅。
その足元には、蹴られて転がる朱貴。
あの強い朱貴がただ一方的に――
腹部を中心に、どす黒い痣を広げていく。
情け容赦ない周涅の登場。
その迸(ほとばし)るような威圧的な存在感と、彼が放った覇気に…淫靡な空間における宴の主催者と共催者は、意識を無くした。
今では逃走を妨げるのは周涅1人だというのに、その周涅のせいで動けない。
周涅が現われた出入り口。
覇気と共に…塞がれてしまった。
否、それ故の覇気だったのかも知れない。
抜け道は上部のみ。
おちゃらけた以前の様子を消し、ただ憤怒と殺気を身に纏う周涅は、その方角を見ようともしていないけれど、きっと気づいているのだろう。
気づかないはずはない。
どうしようか。
このままでは、本当に朱貴がやられてしまう。
頭をフル回転させていた時、馬鹿蜜柑が言った。
「お前…
七瀬と朱貴を連れて、逃げろ」
迷いない褐色の瞳。
「俺が…時間稼ぎをする」
私には出来ない武器の巨大化を成し遂げた煌は、真剣な面差しでそう言った。
「桜、行けッッ!!!」
情けないことに…
私は即時に反応出来なかった。
まるでいつもの…愚鈍な馬鹿蜜柑のように。
頭ではそれがいいと判っているのに、いや…それしか朱貴と七瀬紫茉を連れることは出来ないだろうと予測つくのに…その為に此処に居残ろうとする煌を置いてはいけなくて。
あの…
覚悟を決めたような眼差しを、どうしても無視出来なくて。
あの目は…
――お前達に話がある。
櫂様とよく似ていたから。
私は――
目の前で"死ぬ様"をもう見たくないんだ。
*****************
横たわったまま意識のない七瀬紫茉。
目の前には、"怒"の表情に立つ七瀬周涅。
その足元には、蹴られて転がる朱貴。
あの強い朱貴がただ一方的に――
腹部を中心に、どす黒い痣を広げていく。
情け容赦ない周涅の登場。
その迸(ほとばし)るような威圧的な存在感と、彼が放った覇気に…淫靡な空間における宴の主催者と共催者は、意識を無くした。
今では逃走を妨げるのは周涅1人だというのに、その周涅のせいで動けない。
周涅が現われた出入り口。
覇気と共に…塞がれてしまった。
否、それ故の覇気だったのかも知れない。
抜け道は上部のみ。
おちゃらけた以前の様子を消し、ただ憤怒と殺気を身に纏う周涅は、その方角を見ようともしていないけれど、きっと気づいているのだろう。
気づかないはずはない。
どうしようか。
このままでは、本当に朱貴がやられてしまう。
頭をフル回転させていた時、馬鹿蜜柑が言った。
「お前…
七瀬と朱貴を連れて、逃げろ」
迷いない褐色の瞳。
「俺が…時間稼ぎをする」
私には出来ない武器の巨大化を成し遂げた煌は、真剣な面差しでそう言った。
「桜、行けッッ!!!」
情けないことに…
私は即時に反応出来なかった。
まるでいつもの…愚鈍な馬鹿蜜柑のように。
頭ではそれがいいと判っているのに、いや…それしか朱貴と七瀬紫茉を連れることは出来ないだろうと予測つくのに…その為に此処に居残ろうとする煌を置いてはいけなくて。
あの…
覚悟を決めたような眼差しを、どうしても無視出来なくて。
あの目は…
――お前達に話がある。
櫂様とよく似ていたから。
私は――
目の前で"死ぬ様"をもう見たくないんだ。