シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
ひらり。
煌の脱ぎ捨てられた上着が、私の視界を隠すように降ってきた。
それを合図とするように、煌は巨大化した偃月刀を両手で振り回して周涅に向かっていったんだ。
煌が…強行に出たのか。
偃月刀が風を切る度、鎌鼬にも似た突風が周囲を襲う。
煌を見ている分には、何とも軽々と扱っているけれど。
一振りで、場のおかしな人間達を切り裂くほどの脅威。
今までと…武器の使い方が変わった。
多分、無意識なんだろうけれど、武器自体が持つ力を引き出そうとしている。
巨大化した偃月刀が秘めるのは、櫂様の風の力にも通じていて。
緋狭様の炎、櫂様の風…オリジナルには程遠いけれど、特殊な血筋でもないのに、何故こうも彼は易々とやってのけるのか。
煌の体格と筋肉を生かした動きは、槍舞のように軽やかで華麗で。
荒削りさは消えないけれど、緋狭様の指導された型をきちんと継承している…迷いない力強いものであった。
多分――
煌は、小さい武器よりも…こうした大きく派手な武器の方が合っているのだろう。
何より緋狭様が煌につける武器の稽古は、重量感が大きくて破壊力が凄まじい派手なものが多く。
巨大な戦闘斧(バトルアックス)やら、星球式鎚矛(モーニングスター)やら…特に煌は、星球式鎚矛を「鬼と金棒だ」とギャーギャー騒ぎながら逃げ回っていたけれど、武器を持たせれば、きちんと緋狭様の狙い通りの破壊力を見せ付けていた。
普段の鍛錬を思えば、あの巨大化した武器は強みにしならないはずで…しかしそれをひらひらとよける周涅の強さの方がまだまだ上らしい。
どんな威力ある武器の攻撃だろうと、どんなに矢継ぎ早な攻撃だろうと…見切っている。
まるで…もしかして勝てるかもしれないという儚い夢を見せて、ただひたすら嬲って遊んでいるかのように。
煌では周涅に敵わない。
それははっきりと判る。
だけどそれでも煌は健闘しているんだ。
周涅を…朱貴から引き離すように攻撃している。
これは煌からのメッセージだ。
"俺を置いて行け"