シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「凜ッッッ!!!」
俺は――
握ったままの手を引き寄せ、
芹霞にまた口づけようとしていて。
久遠の声で、また暴走しようとしていた俺は、唇を噛んでありったけの自制心を振り絞り、ざわつく心を落ち着かせる。
早く…戻りたい。
早く…屋敷に帰りたい。
きちんと…俺だということを伝えたい。
俺は…芹霞の手は離さなかった。
離したくなかった。
「今この状況を生んだ理由が何か推測で言ってる時間はない。とりあえず此処は突破する。此処がこんな状況であれば…屋敷の方もどんな危険に満ちているか判らない」
「久遠さま…やっつけてもいいの?」
クラウン王子姿の旭が訊いた。
その中で、きっと旭は大事そうに月の骨を抱いているのだろう。
「最低限でな。戦うよりも屋敷に早く戻る方が先決だ。胸騒ぎがする」
「うんうん。久しぶりの戦いだね、きゃはははは」
場にそぐわぬ旭の笑い声。
「司狼もいれば良かったね、きゃはははは」
「司狼…」
久遠が何かを考え込んだ。
「旭…。お前が月を生き返らせたいと願った時、声が聞こえたと言ったな? その場に…司狼は居たのか?」
「うんうん。司狼と同じ声を聞いたよ?」
「………。
司狼か、これを願ったのは!!!」
久遠は大きく舌打ちをした。