シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
ふと、目に入ったのはパイプ椅子。
椅子が少ないから、由香ちゃんや蓮あたりが座ろうと用意していたんだろう。
――あたし、こっちがいい。
あたしは、玲くんの横ではなく…その椅子に座った。
すると、玲くんの端麗な顔が翳った。
罪悪感溢れる哀しげな顔に変わっていく。
今までの…あの柔らかな表情は何もなく。
ああ、"お試し"の時とは違う時間が回っている…そう思った。
――じゃあ僕もこっちでいい。
あたしの横に並べられた、もう1つの椅子。
これだったら結局同じこと。
あたしが傷つくからと、気何か使わないでよ。
お試しが、玲くんの心を縛り付けている。
玲くんを自由にさせてあげれていない。
玲くん…優しいから。
だったら、あたしが先回りして、玲くんに罪悪感を感じさせないようにしなきゃ。
お試しは終わったんだよって、判らせて上げなきゃ。
玲くんは聡いから、気づいてくれるだろう。
寂しい結末だけれど。
――玲くんいなくても、大丈夫だから。
そう笑った時、由香ちゃんと蓮が現われて。
嫌だというのに、パイプ椅子から引き摺り下ろされ…ずるずるとソファに連れられて。すると何故か一緒に移動した玲くんも横に座ってきて。
あたしが離れて座りたいというのを、判ってくれない。
由香ちゃんは満足したようにパイプ椅子に座ってしまった。
たかが席、されど席。
向かい側からは、凜ちゃんと久遠からの視線が痛い。
横からは玲くんの視線も感じる。
あたしは、誰に遠慮しないといけないのか、最早判らない。
そんな針のむしろの中、話し出そうとした由香ちゃんは、思い出したように部屋から出て行き、大きな大きなタオルを持ってきてあたしにかけた。
――神崎。まずそのお団子頭でうなじ出すのは禁止。それから、クラウン王子のトレーナー見せるのも禁止!!!
あたし風呂上がりはいつもお団子なのに…似合わないらしい。
トレーナーだって、クラウン王子が散りばめられていて、凄く可愛くて可愛くて、飛び上がって喜んだのに…似合わないらしい。
――はい、タオル被ってね!!
由香ちゃんの目が怖いから、髪を解いて頭からタオルを被り、視線を隠すようにして話の成り行きを見守った。
このタオル…視線除けにいいかもしれない。
そう思ったのに…
視線が痛すぎた。