シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
僕は機械室で、プログラムの細かい部分を由香ちゃんと三沢さんに手伝って貰うことにした。
――その撒かれた虚数ウイルス…お前さんのシステムに忍び込んだのか。大した度胸と腕のハッカーだな。
がははははと三沢さんは笑う。
三沢さんも元ハッカー。
プログラム補強に、凄く心強い。
――ねえ、師匠。皆が帰る前に、1つ聞きたいんだけど…。
由香ちゃんが慎重に口を開いた。
――師匠は、神崎の記憶が無くなった理由、知ってる? ありえないだろ? あんなに綺麗すっぽりと忘れるなんて。人為的な気が、するんだ。何があったんだ、神崎に。
僕は、ごくんと唾を飲み込んだ。
そして言ったんだ。
僕の罪を。
僕が、櫂の記憶を消したのだと。
――だけど神崎なら、真実に行き着くよ?
――紫堂櫂を愛してる。
誰を心から愛していたのかを。
そう。
だから来たくなかったんだ。
どんな姿でも、芹霞は櫂を見つけ出すから。
櫂が生きて居る限り、芹霞は櫂を求め続けるだろう。
愛という形で、芹霞は…。
――お試ししてるんだろ? いい感じに進んだとして…神崎が記憶取り戻してしまったら、師匠はどうするんだい?
その時、僕は――。
――まあ、師匠に不利にはならないだろうけどさ。
意味ありげに笑われて、僕が首を傾げた時、由香ちゃんが内線で、1階に居る蓮に呼び出された。
――珈琲とお菓子、蓮と運んでくるね。