シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
逃げ出す彼女を追いかける僕。
彼女は1つの部屋に入る。
何事かと、部屋の内部から上がる悲鳴。
窓際で煙草を吸おうとしていた男が、騒ぎに驚いてライターの火をつけっぱなしにして固まっていた。
僕が窓から逃げようとした彼女の胸倉を掴んだ時、突如彼女は叫んだ。
その目には炎。
火が…苦手なのか?
僕を突き飛ばして方向転換し、部屋から走って出て行く彼女。
僕も追いかける。
それは唐突だった。
突如動きを止めた彼女は…
両膝を床に着き、苦しそうに胸に手をあてたかと思うと…
口から何かを吐き出したんだ。
不透明な白い物体。
あれは――
「蚕!!!?」
声を上げたのは蓮と由香ちゃんで。
剣に映るものも、間違いなく僕の記憶と同一の2人。
――すまない、"由香もどき"にやられた。不甲斐ない。
――師匠が気づいてくれてよかったよぅ…。台所来たら縛られて。乱入した司狼もおかしなこと口走るだけで気づいてくれないし…。
「由香ちゃん、目を瞑ってて」
僕は…由香ちゃんもどきを上下に切り捨てた。
飛び散る汚濁液と腐臭。
しかし…大きく裂けた口から生み落とされた蚕から、何かがびちびちと破れる不穏で不快な音がして。
数度びくんびくんと脈動したその内部には、今にも飛び出て来そうな大きな"何か"が蠢いていて。
ぱしゅぅぅぅ。
破裂した。
剣を構える僕の前で、
破れた中から出てきたモノは…
――何でまたボク!!!?
由香ちゃんの姿になったんだ。