シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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それから直ぐ、由香ちゃんが呼びに来て、僕と櫂は応接間に移った。


向かいに久遠、隣に櫂。


何でもない、ただ黙して座っているだけの図。


僕に向けられる瑠璃の瞳。

櫂に向けられる紅紫色の瞳。



今でもまだ、久遠が心崩すのは櫂だけだ。


ボクハナニ?



そこに芹霞が現われた。


――たのもーッッ!!!


上気した肌、しっとりとした色気を見せる項。


風呂上がりの芹霞など、これが初めて見るわけではないけれど。


独占欲が強まる中でこんな姿を見てしまえば、必要以上に芹霞は"女"だと意識してしまう。


滾る"男"の本能。


必要以上の色気を目で追い、甘い薔薇の匂いを嗅ぎ取ってしまう。


吸い寄せられそうなる。


…久遠と同じ匂いの薔薇の香りに。


嫉妬に似たその事実で何とか、揺らめく理性を落ち着かせる。


ああ、櫂も久遠も、そんな目で芹霞を見るなよ。


芹霞に惹き付けられた漆黒の瞳は…甘さと切なさに揺れ、紅紫色の瞳は芹霞を一瞥しただけで…わざとらしい程芹霞に向かない。


芹霞以外の女性を絶ってきた櫂と、芹霞以外の関係を持ってきた久遠。


対照的な2人は、間違いなく芹霞を意識している。


隠してやりたい。

僕の腕に閉じ込めて、見えなくしてしまいたい。


そんな想いが膨らむ中、次第に…僕の心は硬化した。


ねえ、芹霞。


君が着ている服…


何でクラウン王子が敷き詰められたトレーナー?


可愛い芹霞が、ぶちゃいくワンコの顔で台無しだ。


そう思ったのは、隣の櫂も同じ。

顔つきが不機嫌そうだ。

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