シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「真実を見抜くことが出来ねば…味方だと安心出来る環境にはいられないということか。

そうして疑心暗鬼にさせられ、孤立させられて…心理的にも追い詰められていくのだろう。状況判断出来ない程、幻に苛まされていることにも気づかずに」


くつくつと久遠は笑う。


僕はS.S.Aを思い出す。


「司狼が襲った由香ちゃんもどきは、使い魔…式神かな…」


誰が放ったものかは判らないけれど。


「人間が蚕を産む習性がなければ、そうした妖しげな類のものだろうな。ただ…瞳がオッドアイというものがどんな意味があるのか…。

式神というものは、大方、術者の特徴を僅かなりとも引き継ぐものだとオレは聞いたことがある。術者のささやかな自己主張みたいなものだ。それが外見的特徴の場合もあれば、性格もあれば、似た力を持たすこともあると。オッドアイに何か心当たりはないのか?」


芹霞はタオルを被ったまま。

由香ちゃんと櫂と目が合った。


オッドアイ。


考えられるのは――…


櫂の記憶の中にある、黄幡一縷。


そして。


現黄幡会"ディレクター"黄幡計都と、"エディター"上岐妙…


あれ、上岐妙はオッドアイだったよね?


上岐妙の記憶が…曖昧だ。

嫌悪しているからだろうか。

だけど…死んでいるはずで?


今、何かが閃いたけれど…消えてしまった。

僕は何を考えた?


まあいい。他にも、まだいるのかも知れない。

そうしたオッドアイが。


「どれも…黄幡家繋がりか…」


久遠が気怠げに腕を組んだ。


「ねえ、各務は旧家だ。だったら此処の蔵書で黄幡家の…」


「師匠。探していたんだけれどさ、過程すっ飛ばして結論から言ってみると…見つからないんだ。多分、あるはずなんだけれど見つけられない」


僕は目を細める。


「電子データになってないの?」


僕は、司狼と旭に…スキャナを教えたはずだけれど。


「したんだけれどさ、データが一度に消滅したんだ」


「消滅?」


「ほら、言ったろう? "電脳世界に気をつけろ"。そのメッセージの直後、消失したんだ。デフォルトの…氷皇のPCデータまで。復旧不可能。だから、電子データは全て綺麗さっぱりなくなった」


「氷皇データまで? あの…桜華学園長の不正とかの?」


「うん、それだけじゃないんだけどね…」


由香ちゃんは端的に教えてくれた。


僕の名前が混入していたという…『TIARA』。

論文めいたものが氷皇のデータに混ざっていたのは記憶している。

その詳細までは目を通しはしなかったけれど。


実験データに僕の名前だって?

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