シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「もしかすると…」
僕は1つの推測を述べた。
「紫堂で僕は"何か"の実験体にされているんだ。
多分それが…関係あると思う」
「「「「は?」」」」
久遠と蓮と由香ちゃんと…そして芹霞。
芹霞の顔を覆うタオルが、はらりと膝に落ちて。
出てきた可愛い顔は、僕を心配していてくれていると判る…翳ったもの。
嬉しい。
それが僕の素直な感想。
僕のことを案じてくれてると思ったら…嬉しかった。
実験されててよかったとさえ思ってしまった。
本当に…単純だね、僕。
「何か変な薬飲まされたり、血液検査から、細胞採取から…電極を通して体に電気を流されたり…まあ色々と。大丈夫、骨肉を切り刻まれる所までは至っていないから。傷はないからね。幾ら、制裁者(アリス)を生み出した紫堂の研究機関とはいえ…僕は不死身ではないということは判っていたみたいだ」
櫂の顔が苦渋に歪む。
一度、緋狭さんによって潰された闇の研究機関。
多分、それが復活したのだろう。
緋狭さんは知っているのか、知らないのか。
そうだ、研究機関が復活したから…制裁者(アリス)も復活しているのか?
或いは――その逆か。
僕が実験に抵抗して破壊に回らなかったのは、それが次期当主の条件だったから。
もしそれがなければ…僕だって本格的に動く。
それを"我慢"と受け取っている櫂は、噛みしめた唇を震わせていた。
「大丈夫。煌ほどの酷いことはされていないから」
だけど――
心臓発作を誘発させる程強い電気ショックを与えられていたことは、伏せておこう。
「実験の目的は伝えられていない。
氷皇のデータの存在の方が実験前に在る…ということは、誰かが何かの仮説を打ち出して、それに僕が適合していたということかも知れないね。
つまり、氷皇データは、僕が如何にその実験に適しているかを、独自の実験データを用いて、その人なりの方法で実証した結果といえるのかも知れない」
そう考えれば――
「紫堂玲が次期当主になったのは、実験を試みる奴らにとっては、都合がよかった…ということだな」
久遠が言った。
僕が次期当主という肩書きに齧り付いたのは、櫂と…仲間、そして芹霞を守る為。
それが偶然か、必然か…利用されたんだろう。
間違いなく――紫堂当主は知っている。
僕が実験体になることも、そのデータの意味する実験を行っていたのも。
指揮官は当主なのか別なのか判らないけれど。
確かなのは――
僕はただ――
次期当主という餌に齧り付いた、
滑稽すぎる…傀儡だということ。
僕は、決して――
認められたわけではない。