シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
僕の頭の頂には、
贋物の権威の象徴。
脆くて直ぐ壊れる…
玻璃の星冠(ティアラ)。
跪(ひざまず)いて懇願し――
獲られたのは紛(まが)い物。
――玲様!! お見事です!!
――さすがは玲様!!!
思い出すな。
あれは夢幻。
――まだ居るのか、この紫堂に。
――厚顔無恥とはこのことだな。
――従兄という憐憫で櫂様に情けをかけられているの、知らないのか?
思い出すんじゃない。
いつものように耳を塞げ。
――やはり玲様には次期当主という肩書きがお似合いだ!!
――信じていましたよ、玲様!!
――玲様の方が、次期当主に相応しい!!
人の心など移ろいゆくもので。
より強い力に流されるもので。
より輝くものに惹き付けられるもので。
審美眼がない連中はころりと騙される。
――これで紫堂は安泰だ!!!
本物の王冠(クラウン)は――
櫂のものなのに。
――よく返り咲けるな、櫂様の温情を受けていて。
――所詮、欲に眩んだだけの男だ。
「………う?」
――身の程知らずが!!
そうだ。
それが正しい反応。
僕は櫂の影。
決して光になれやしない。
それでもいい。
選んだのは僕。
だけど…芹霞だけは。
芹霞にだけは――
僕は光でいたいんだ!!
「師匠?」
不意にかけられた由香ちゃんの声に、びくりと体が震えてしまう。
「ごめんね、ちょっとどうでもいい考え事」
慌てて笑う僕に、漆黒の瞳が絡みついた。
責任を感じたような悲哀に満ちた眼差し。
多分、櫂は見抜いている。
僕の…紫堂における立場を。
芹霞を必死に手に入れようとする僕を。