シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「それでもな、ここだけの話…。久遠様は紫堂櫂が心配らしい。何か変調があったら大変と、ずっとこうして見守っている」
は?
心配?
誰が誰に?
引き攣って見る久遠は、こちらに全然気づいていないのか、それとも気づいていても無視を決め込んだのか、無反応で本を読み耽っている。
「久遠様は、本当にどうでもよければ、どうでもいい反応をするのに…やはり今回は何か違う。何か…杞憂でもあるのか、ずっと本で勉強されているし」
蓮の出す言葉の1つ1つが理解出来ない。
どう見ても、俺に対する罵詈雑言は"どうでもいい反応"だろう?
杞憂…しているか?
あれは…勉強なのか?
ただ暇だから本を読んでいるだけではないのか?
「久遠様は、死人返しは出来ても体力回復というものがお出来にならない。それで『薬草学』の本を読まれて…」
「きゃはははは~。あの"しちゅ~"は久遠様のお薬入り~」
何だか――
腹が痛く感じたのは、気のせいだろうか。
「お前の声が戻らないのも気にされている。自分の力不足だと。お前が"返って"からも…久遠様は眠られず、ずっと勉強されている。元々本好きで勉強好きな方であったが…今の読書量は以前の比ではない」
「きっとね~、きっとね~。久遠様はかいくんに"怒られたい"んだよ。だってかいくんだけだもの~、怒られた久遠様が喜ぶの~」
声を低めていた蓮とは対照的に、旭の大きな…快活とした声が部屋に響き、
「旭。オレは喜んでいない。
そんな変な趣味はない」
それは冷え切った瑠璃色の瞳で。
「……おい、そこの死に損ない。目で笑うな。オレはマゾじゃない」
俺を見る時は、瞳の色は紅紫に直ぐ変わる。
何なんだ、本当にこいつは。
理解出来ない。
理解もしたくない。