シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「しかしさっぱり判らないね。何なのさ、まずあの塔。東京タワーがブラックツインタワーだって!!? テレビ局は黒い塔だって!!? 何で東京、この数日でそうなっちゃってんだよ、皆何で納得してんだ!!? 

で、何で"約束の地(カナン)"にも伝播してるのさ!!」


「此処には、テレビ局ないのにね…」


芹霞のぼやきが聞こえた。


少しずつ話してくれるのが嬉しくて堪らない。

例え、僕に向けられたものでなくても。


「テレビ局はないが…久涅がテレビカメラを取り入れたのは、何か関係あるのだろうか」


蓮が腕組をして首を傾げた。


「テレビ局と"深淵(ビュトス)"の塔に…何の関係があるというんだ?」

「蓮。"深淵(ビュトス)"の塔とは形状が少し違う。

あれは…多分、虚数で爆発させる為の…砲撃台のようなものだと思う」


僕は言った。


「爆発…?」


久遠の声に僕は頷く。


「あれは…正常の電気0と1を取り込み、-1の虚数に変換する塔。そう、此の地に撒かれたウイルスと同じような役割がある上、もしかすると凄まじい爆撃をあそこから加えられるかも知れない」

そう、これはもしもの話。

もしもそうなれば――


「"約束の地(カナン)"そのものを…滅ぼすつもりか」



笑えない…言葉を久遠は口にした。



「だから助けてやると…偉そうに久涅は言ったのか?

馬鹿にしやがって!!」


珍しく、久遠は憤りを顔に表して、拳で机を叩き付けた。


「止める方法はないの、師匠…」


「あるとすれば…純金。虚数に純金をあてて初めて爆発する。だから…"約束の地(カナン)"を崩壊させる為には、かなりの純金が必要になる。逆に言えば、純金さえなければ爆発しない。EMP…電磁パルス爆弾は」


「「EMP!!?」」


由香ちゃんと久遠が同時に声を出し、櫂も驚いた顔をしていて。


「師匠それさ、氷皇の『TIARA』の中で、師匠の名前の次に頻度が高かった単語だったんだよ」


「EMP…電磁パルスが僕に関係あるって…?」


否定できない心がある。


僕には…共鳴音が聞こえるのだから。


――オリジナルは・・・流石です。

――貴方の中から取り出した、特殊な周波数ですわ。


不可解だった制裁者(アリス)…

凱…雅の言葉。


僕が関係していたと考えれば――

しっくりこないだろうか。


僕は…渦中にいるというのか。
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