シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
どうして…こうなってしまったんだろう。
"約束の地(カナン)"に来てから――
芹霞の態度が変わってしまった。
僕の不安どおりに…状況が進んでいる。
――紫堂櫂を愛してる!!
櫂と何を話したの?
櫂を見て何を思ったの?
今…
君の中での僕は、どんな存在なの?
僕の告白は――
君の心の中に残っているの?
僕を…消さないで。
僕を…忘れないで。
ねえ…僕はずっと傍に居たんだよ?
「………ぃ…」
櫂ではなく…
僕と一緒に…居たんだよ?
僕を…見てよ。
「……れ…ぃ…」
櫂の声が向けられた。
何度か呼ばれていたらしい。
目の前に居て呼ばれていたのに…
気づかないなんて。
少し、声が回復したのか。
「風呂…入って…くる…」
僕は――
その言葉を深く考えていなかった。
苦笑した櫂が見せた片腕は、僕を黄色い外套男から守る為に傷つけられたままで。
血がこびり付いていた。
洗い流さないと大変で。
そして――
櫂が芹霞の視界から居なくなれば、
少しでも僕の心は落ち着くのではないかと…
そんな…自分勝手なことを思っていて。
僕は切羽詰まっている櫂の心なんて、
まるで感じる余裕もなかったんだ。
「判った。ゆっくりしてきてね」
判っていなかったんだ。
櫂の――
男に戻ろうという覚悟なんて。
それがどんなに僕を苛ませる結果になるかなんて…何1つ。