シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「オレの名誉の為に言っておくが、オレは変態でもなんでもない。変態はお前の飼い犬だろう。今…あの変態犬はどうしてる?」
突如話を振られて。
喋れない俺の代わりに、遠坂が八の字眉をして経緯を語る。
「――…そして、共食いに至る蛆を放って、葉山を抑えつけ、発作を起こした師匠を笑って消えたんだ」
あの時、俺には状況判断している余裕はなかったから、改めて聞いた事実に…心が痛んだ。
制裁者(アリス)に…煌は戻ってしまったのか。
煌は…流されてしまったのか。
俺を慕いつも助けてくれてばかりいた幼馴染は…8年前のような悲劇をまた繰り返そうとしているのか。
煌の傍に居ない自分の立場の脆さが嘆かれて仕方が無い。
だけど、俺は煌と約束したから。
必ず、煌は戻ってくる。
必ず、連れ戻す。
「ふうん? 裏切ったんだ?」
それは特に動じた様子もなく。
「じゃああいつで間違いないということか。
いい位置にいるじないか、あいつ」
そう言って。
「今――
東京がどうなっているか、知っているか?」
久遠は本を閉じた。
「黄色い蝶の目撃者は――
暁色が血に染めている、そうだ。」
――暁、!!!?
「蝶を見たという被害者の身体には、必ず共通の"あるもの"がある」
俺達は久遠を見た。
「赤き薔薇の刻印。
それは巷で、こう言われるようだ。
"血色の薔薇の痣(ブラッディーローズ)"って」