シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
緋狭様が敵になったと落ち込んで、その緋狭様のおかげで櫂様が命を取りとめ、そして私を救ったのを知った時、煌の喜びようは大きかった。
私以上に緋狭様に対する思いは…大きい。
芹霞さんによく似た、神秘的な黒い瞳が褐色の瞳を捉える。
「……何を修行している、馬鹿犬。
鍛え直しだ。
――基本鍛錬10倍」
びくっ。
青褪め…飛び上がって震えた馬鹿蜜柑。
その分、彼の抱える恐怖も大きいようだけれど――
「い、いいんだ、緋狭姉とまた修行できたらッッ!!!!」
ふにゃりと顔を緩ませた腑抜け蜜柑は…
「ほう…そんなに喜ぶのなら、更に倍にするか」
「に、20倍ッッッ!!?」
馬鹿さ加減の方が上回っているらしい。
騒々しい日常が凄く懐かしい。
襦袢姿で現れたのは…
偶然ではないだろう。
匂い立つような艶姿。
それでも神々しさは失われることなく。
しかし思うんだ。
堂々としすぎた様が気にかかる。
そういう立場ではなかったはずで。
私達とは…表向きでも袂を分かったはずで。
緋狭様は…一体…?
「裏切るのか、紅皇」
恐ろしく低い…唸るような周涅の声がした。